アメリカバスケ
NBAで働く日本人:佐藤晃一さん(ワシントン・ウィザーズトレーナー)前編
ワシントン・ウィザーズでリハビリテーションコーディネーターとして働く佐藤晃一さんが、トライ・ワークス社主催のトレーナー向けワークショップに講師として参加するために帰国。貴重なお時間をいただき、NBAで働くきっかけからウィザーズの現在や将来について、そしてトレーナーという職業についてお話を伺った。NBAドラフトNo.1ルーキー、ジョン・ウォールの凄さなど、NBAファンにも納得な裏話もご紹介。
ウィザーズで働くきっかけはたまたま!?
- 早速ですが、どのような経緯でウィザーズで働けるようになったのでしょうか?
佐藤氏:簡単に言えば、たまたま知ってる人が僕を探してくれたとでも言いますか...。
ウィザーズの前はNFL選手のリーバイ・ジョーンズのパーソナルトレーナーをしていました。ウィザーズのエリック・ウォーターズというヘッドトレーナーが、リハビリテーションコーディネーターという僕の仕事と同じポジションの人材を探していました。ヘッドトレーナーの顔見知りであり、なおかつ仕事ができる人材を探していましたが、実際には顔見知りだけでは選択肢がなくなり、知り合いの中で推薦できる人と間口が広がりました。
ダラス・マーベリックスのヘッドトレーナーは僕がアリゾナ州立大にいた時に一緒に働いていた人で、フェニックス・サンズのヘッドトレーナーもよく知っていました。エリック(ウィザーズのヘッドトレーナー)とその二人はすごく仲が良く、彼らが推薦してくれたわけです。
ほどなくして、リーバイ・ジョーンズが当時在籍していたNFLシンシナティ・ベンガルズのキャンプ中で練習を見ていた時にエリックから電話がありました。すぐさま次の日の朝6時の飛行機でDCに行き、面接され、仕事をオファーされました。本当に良いタイミングだったというか、偶然が重なったと言うことですよね。
アメリカでは、「It's not what you know but who you know」、自分が持っている知識だけが重要ではなく、コネも大事だと良く言われますが、僕は両方とも大事だと思っています。ネットワークを作っていかなくてはいけませんが、その人たちの質も高くなければ良いところにもいけません。自然とお互いの言いたいことが分かっている仲が大事です。エリックも僕がやりたいことに対して理解を示してくれたので、話はうまく進みました。
NBA選手の6割は自己破産!?
- 漠然とした質問ですいません。NBAの現場というのを想像できないのですが、実際どのような場所なんでしょうか?
- 佐藤氏:うーん(しばらく考える)。でも、感覚としては大学と同じですよ。プロだからみんなヤル気があるかと思ってるかもしれませんがそんなこともなかったり、いろんな選手がいます。もちろん、お金で言ったら全然違います。
練習は1時間半〜2時間程度行うだけですので、選手の練習日における拘束時間は長くても3時間ほどです。その割に忙しいからあれはヤダ、これはヤダと言われても、残りの20時間以上何をすることがあるんだ...と思ったりもします。笑
もちろん選手によっては、僕らのケアをしっかりやる人もいますし、おもしろいですよ。
正式に統計を取ってるかどうかはわかりませんが、NBA選手の6割は自己破産すると言われてます。今回、ジョン・ウォールというドラフト1位の選手はまだ19歳で、何億円という大金でリーボックと契約しました。お金の使い方が分からない選手だとそれは大変ですよね。たぶん、彼は大丈夫だと思いますが。
そのような世界ですので、ダラスのヘッドトレーナー曰く「あまり肩肘張らずに、選手15人の中で1人か2人でも自分のやり方に賛同してくれる選手がいて、その選手たちと一生懸命やるぐらいのスタンスでやらないと息が詰まってしまうよ」と言われました。
昔は一緒に働く人みんなに良くしてあげられるはずだと思っていましたが、ある程度レベルが上がるにつれ、その感覚を緩めないといけないと今は感じています。
- トレーナーとしてNBA選手の体を触っているわけですが、特筆すべき点は何ですか?
- 佐藤氏:もちろん体は大きいですが、これも大学生とそんなに変わらないですよ。逆にこんな動きもできないの?という選手もいます。今日の講義でも話しましたが、体の動きの基本でもあるちゃんと座れるか、立ち上がる動作ができるかというレベルでは同じです。
NBA選手はパワーが大きいので、小さな問題が大きな事故につながりやすいです。よく例として挙げるのですが、人間の体は車と同じで、近所へ買い物に行くために毎日時速40kmで走ってる分には、アライメント(ホイールの整列具合)が悪くても長持ちします。しかし、スポーツカーが時速150kmで走るとおかしくなる。それと同じで、あれだけ体の大きな選手が出力を出していることはちょっとしたゆがみでも問題になります。そこをケアするのが我々の仕事です。
NBA選手の素晴らしいところは、動きの習得力は早いです。教えるとあっという間にできるのはスゴイですね。
ジャベル・マギー
- 佐藤氏:バスケット経験はゼロです。中学時代はバレーボール、高校時代はブラスバンドでドラムを叩き、大学時代はアメフトでした。リハビリやスポーツ医療に興味を持ったのは東京国際大学でアメフトをやっていた時です。その後、アリゾナ州立大学にいた時、最後の4年間を男子バスケットボールに配属されたのが、最初のバスケットとの関わりになります。
- では、日本のバスケットをご覧になったこともありませんよね?
- 佐藤氏:残念ながらほとんどありません。現在、仙台89ERSでトレーナーをしている北川 雄一くん、トライ・ワークスさんでもワークショップをされたりしてますが、彼とはアリゾナ州立大で一緒でしたので、仙台89ERSの試合を何度か見たことがあります。2回くらいかな。
- 佐藤氏:.........いやぁ.........。ウチにジャベル・マギー(アメリカ代表選出)がいるじゃないですか。7フッター(213cm)の選手が、3Pラインから2歩くらいでゴールに到達するのを見るとやっぱりNBAはスゴイなぁって思ってしまいます。体が大きくても動ける選手がNBAが多いですからね。レブロンもそうですし...。
次回(8/12配信予定)はそんなNBA選手たちの凄さを身体能力の差で片付けて良いのか?から始まり、アスレティックトレーナーの職業に迫る。