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FIBAアジア選手権決勝:18vs10,000の好勝負

気迫と興奮がヒシヒシと伝わって来る。

完全アウェイとなった重圧を吹き飛ばすように、ウォームアップから豪快なダンクをぶち込むヨルダンは、自らを奮い立たせている。
試合前の恒例儀式である揺れる円陣。その中央にはMAXこと#10Zhang Zhaoxuが、221cmの大きな体格を右へ左へと動かし舞い踊る中国もまた、期待という重圧を押し返していた。
会場内のボルテージは最高潮。それぞれこのアジア選手権において、9試合目を迎えた決勝戦。中国vsヨルダンの火蓋が切って落とされた。

大会を通じて成長し続けた両チーム

負けなしの8連勝で決勝に進んだ中国に対し、ヨルダンは予選ラウンドからこれまで4勝4敗。ギリギリでリーグ戦を勝ち抜き、決勝トーナメントに突入するや否や、スリーピート(3連覇)を狙うイランを倒し、アップセット。準決勝でフィリピンを退け、ここ一番で力を発揮し、決勝の舞台に辿り着いた。

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史上最弱の中国。大会が始まった頃、もっばらそんな悪評をよく耳にした。予選ラウンドでのイランや韓国は、同等以下のチームに対して安定感ある試合展開を進めたが、中国は相手のペースにつき合い、点差がさほど開かないホームチームらしからぬ試合が続いた。

連戦によりケガ人が出たり、連敗のショックを引きずったり、コンディションもメンタルも浮き沈みが激しく、己に打ち勝たねば、敵にも勝てない。タフなゲームが続く中で、試合を重ねる度に成長して行ったのは、決勝に進出した中国であり、ヨルダンだった。また、1ゴール差で惜しくも4位となり、世界への切符を奪取できなかったが、前回大会8位からベスト4進出にジャンプアップしたフィリピンもそのひとつと言える。

準決勝、中国vs韓国戦。事実上の決勝と言われ、その通りの死闘が繰り広げられた。敗れた当事者たち以外、この試合の満足度は高く、翌日の決勝戦は消化試合とあしらわれてもいた。

ヨルダン18 vs 10,000 中国

武漢スポーツアリーナを埋め尽くさんばかりの1万人が声を上げて、地元・中国をサポート。対するヨルダンは、登録選手12名+ヘッドコーチ以下スタッフ6名、計18名と数で圧倒されるが、最高のテンションで真っ向勝負に挑む。

先制したのはヨルダン。大観衆からのプレッシャーをものともせずに、#5Rasheim Wrightが得点を挙げる。中国は#11Yi Jianlianのダンクがスイッチとなって勢いに乗る。中国圧勝の予想に反し、36-31と5点リードし前半を終えたヨルダン。

今大会、いつもそうだった。前半は相手ペースにはまり、乗り切れずに接戦を演じる中国。観客を満足させるためのシナリオでもあるかと疑うほどだった。しかし、後半になるといきなり牙を向く。そして、この日もそうだった。
#5Liu Weiの3Pシュートが決まり、#11Yi Jianlian、#14Wang Zhizhiと新旧NBA選手が得点を決めると開始2分と立たないうちに38-36、あっという間の逆転劇。3Q残り3分を切った時点で54-44、中国は10点リード。

極度の興奮は在らぬ方向へ

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ヨルダンも意地を見せ少しずつ点差を詰め、リズムを掴みかけていたのだが...。中国寄りとも取れるジャッジに、ついにフラストレーションを爆発させる。その態度に審判も熱くなり、あまりにも簡単に取りすぎたヨルダンに対するベンチテクニカル。
追い打ちをかけるように203cmながらもインサイドを張っていた#15Zaid Ahmed Abbasが5つ目のファウルを犯し、コートを去るはめに...。残り時間はまだ4分もある。
このファウルコールに対し、憤りを隠せず不満を口にしながらベンチに下がったAbbas。あまりにも不用意なファウルに対して、鬼軍曹トーマス・ボールドウィンHCも声を荒げ、騒然となるヨルダンベンチ。

予選1位通過負けなしのホーム中国と、予選ギリギリで4位通過のヨルダン。成績や実績だけを見れば、この時間帯に中国がセーフティリードを保ち、あとは歓喜の瞬間を待つだけ。誰もがそのシナリオを描き、胸を弾ませ大枚を叩いてアリーナに詰めかけたていた。
だがしかし、想像とはかけ離れた緊迫した状況に、観客席はもとよりコート内も騒々しく、在らぬ方向へ熱がこもり始める。

ファウルアウトで収拾がつかないレバノンベンチへ向け、悪質な中国人サポーターがこの一戦に水を差した。
ベンチ裏を陣取ったその輩は、興奮するヨルダンベンチに向け、水をかけ、ペットボトルがコートに投げ入れられた。両チームは入り乱れ、このまま試合が終わるのでは......最悪の事態が頭をよぎる。
ここで下されたジャッジは、中国のベンチテクニカルでフリースロー2本を与え、何とか事態は終息し、クライマックスへ突入していく。

帰化選手たちの集中力

Wrightはアメリカ生まれの帰化選手。他国を見ていても、帰化選手は集中力に欠ける時間帯があり、諸刃の剣とも感じていた。Wrightもまた、他の試合では感情をコントロールできず、持って余るパフォーマンスを十分に出し切れずに負けたゲームもあった。しかし、一度"ゾーン"に入ると手をつけられないのもまた、助っ人帰化選手への期待でもある。
水をかけられ、さらに熱くなりながらも、しっかりと平静を取り戻して2本のフリースローを決めた。集中力を研ぎ澄まし、ドライブからゴールをねじ込み点差を詰める。残り時間1'32。Wrightが3Pを沈め69-69、1万人の歓声を悲鳴に変えた。

退場したAbbasに変わって入っていた#6Ali Jamal Zaghabもまた、インサイドを止めきれずに痛恨の5ファウル。そして与えたしまったJianlianへのフリースロー。1投目をミスし、頭を抱える1万人。何とか2投目を沈め、70-69。
残り時間は28秒。1点リードする中国だが、勝利へのチャンスは攻撃権を持つヨルダンの方が近い。しかし、中国がディフェンスで上回り、攻めきれないヨルダン。強引に放ったWrightのシュートは外れ、残り6秒。リバウンドを獲ったヨルダンが初優勝への望みをつなぐ。

技術を上回る気持ちが勝利を導く

興奮冷めやらぬまま、翌日、帰国の途に着き、すぐさま日本の新聞を広げる。日本が7位で大会を終えたこと、そしてこの熱戦の行方は淡々と得点結果だけが隅っこの方で伝えられていた。

ヨルダンのラストシュートはリングを通過し、ネットを揺らすことなく終わった。
もし、中国が敗れていたら、あのアリーナはどんな雰囲気に包まれたのだろうか?恐いもの見たさの好奇心が、残り4分からフツフツと沸いていた。コートにどんもものが投げ込まれ、そして最上段にホスト国がいない表彰式はどれほど閑散としたものになったのであろうか...。

そんな気持ちに駆られたのも、ヨルダンが強い気持ちを持って戦い抜いたからである。
国際試合は、単なる技術優れるアスリートでは勝てない。戦う気持ちこそが重要であり、ベスト4に勝ち残ったチームは、他の国々に比べ勝利への執念が格段に上回っていた。ケガをしても足を引きづってコートに立ち、敗れていても選手自ら立ち直り、諦めずに望みをつないだ。

決勝の一報を伝える翌朝の地元紙に載っていた大会MVPを受賞したJianlianのコメントが全てを物語っている。
「タフなゲームになることは最初から分かっていた。それに打ち勝つメンタルは十分準備していた」。

(Text by Izumi)





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