ある日のリンク栃木戦の後、家路に向かう道すがら、こんな会話が聞こえて来た。
「一人でどんどん点を決めていくところは、なんか流川に見えなかった?」「俺もそう思った!川村だろ」。
スラムダンクの名シーンを現実に当てはめることはよくある話だ。
スラムダンクが最終回を迎えてから早15年...しかし、いまだに日本を代表するバスケは、間違いなくスラムダンクである。海外に行った際、バスケの話になるとスラムダンクが話題に上がるのは良くある話だ。
2002年のウィンターカップ。ジュニアアジア選手権が12月に開催されたため、変則的にいつもの年末ではなく年明け1月に開催。会場は東京体育館が使用できず、代々木第二体育館はもとより大学や高校の体育館で開催され、連日長蛇の列、そして早々に入場規制がかかる大変な年だったと記憶している。ひんやりする日も多い昨今の代々木第二体育館だが、さすが超満員に膨れ上がると場内は暑い。観客席で両隣隙間なく座ったのは初めての経験だった。
その年、コート上で熱戦を繰り広げるのは、年令ははるか一回りも違う高校生。しかし、ハイレベルかつ熱い戦いには、声を発せずにはいられなかった。そして、また見たい、次も見たいという気持ちに駆られ、足繁く会場へと通った。落ち着き払ったゲームコントロール、とんでもないパスを繰り出し、ダンクを決める。しかも試合中に何本も、だ。さらに2mが1チームに2枚もいる。そう、黄金世代と呼ばれる選手たちがその高校生離れした技を繰り広げ、老若男女を魅了した。
接戦続きの準決勝〜決勝戦を見た時、リアルがマンガを越えた。スラムダンクがマンガだけの世界ではなくリアルになった。そう感じずにはいられなかった。
その後、この黄金世代は着実にステップアップし、大学時代にはユニバーシアードで世界4位になった。ご存じの通り、2mの双子は洛南高校からそれぞれ違う大学へ進みながら活躍を続け、竹内公輔(現トヨタアルバルク)・譲次(現日立)は大学生で日本代表に選ばれ、世界選手権の舞台にも立った。
黄金世代はJBLへ進んでも順調に活躍し、3年目の2009年。香港で開催された東アジア大会には若い世代の日本代表で挑むことになり、当時25歳の黄金世代が中心メンバーとなって出場。その年の夏、アジア選手権において過去最低を更新する10位という不甲斐ない成績を残した日本代表。
先に繋がるものがない東アジア大会ではあったが、その鬱憤を晴らすかの如く、気合い漲る試合展開で快進撃を続けた。準決勝では唯一フル代表で参戦したチャイニーズ・タイペイに67-69で惜しくも敗れたが、3位決定戦では中国を相手に79-71で勝利を収め、銅メダルを獲得。
竹内兄弟によるハイポストからローポストへと、双子ならではの息のあったコンビプレイが飛び出した時には、安西先生のようにブルッと身震いがした。岡田優介は次々と3Pシュートを沈め、関西弁をまくし立てながらチームを引っ張ったPG正中岳城(ともにトヨタアルバルク)、菊地祥平(東芝)の強気なドライブなどそれぞれがキャラを立たせ、なおかつチームが一丸となり、中国に一矢報いることができた。この時、再びスラムダンクを凌駕した。
その後も試合を観戦する度にしばしば、スラムダンクと比較してしまう。リアルが上回ったのは、やはりJBL2009-2010ファイナル第3戦だろう。アイシンvsリンク栃木の4Q残り1秒、川村卓也の放った3Pは同点ブザービーター。試合は延長戦へともつれ込み、リンク栃木が絶対王者であったアイシンをスウィープ(3連勝)で退け、優勝に輝いたあの試合は神がかっており、スラムダンクを越えていた。
そして本日。どちらもプロ顔負けのようなストイックに鍛え上げられた両雄、東海大vs青山学院大が相まみえたインカレ男子決勝戦。準決勝を見る限りでは東海大の方が調子が良いかな、と思っていた。試合後、青山学院大の辻 直人は、観客席にいる友人に「勝てないと思ってた」と吐露していた。前半は35-32と僅差で終えたが、後半開始直後、東海大が攻め立て開始早々に45-39と完全に主導権を握った。
しかし、その悪い流れを断ち切ったのは青山学院大の比江島慎だった。前半から活躍していたライバル田中大貴に敵対心を燃やしながらドライブを仕掛け、連続してファウルを誘い田中をベンチへと追いやった。圧巻はディフェンスをはね除けながら強引なダンクで47-47、同点に持ち込んだ比江島のプレイ。この時、「ぶちかませ!」と流川 楓の声が聞こえたような気がするのは気のせいだろうか...。
その後は青山学院大がリードする中、東海大も粘りを見せたが、最後は77-66で青山学院大学が勝利し、2年連続大学4冠(関東トーナメント、関東新人戦、関東リーグ戦、インカレ)の偉業を成し遂げた。緊迫する場面で3Pを決めまくっていた辻 直人は、まだ試合終了のホイッスルまで1分ほど時間があるにも関わらず感極まり、コート上で涙を拭っていた。これは山王工業戦での赤木剛憲のシーンを彷彿させる。もちろん、今日のこの試合も、スラムダンクの名勝負をはるかに越えている。
スラムダンクはバスケ界にとってバイブルとも言える名作である。連載がとっくに終わっているにも関わらず、そのバイブルを当たり前のように通り、バスケに打ち込んできた選手たちは今、各世代で開花している。スラムダンク続編待望論は今も絶えない。しかし、井上雄彦氏が蒔いた種は、芽となり葉となり、スラムダンクの続編として現実の舞台で着実に花を咲かせている。
インカレが終わり、まもなく12月がやって来る。スラムダンクでは描かれなかった高校最高峰の戦い、ウィンターカップのシーズン到来。今年もマンガ以上のドラマが待っている。
スラムダンクは今なお、様々な試合会場で脈々と連載が続いていると思えば、バスケはさらに楽しいではないか。
Text by Izumi
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