男子日本代表がレバノンへ向かう前日、「イスラエル・レバノン両軍が衝突、兵士ら4人死亡」というショッキングなニュースが流れ緊張が走る。土壇場に来て、スタンコビッチカップの開催はもちろん、日本代表の安全は約束されるのか、レバノンへ行けるのかなど、様々な不安がよぎる。
そんな中、田臥 勇太の参加に対しNGが出る。このニュースとは全く関係なく、ジョーンズカップ終了後に発症したウィルス性の病気のため、免疫力が低下している中、24時間かかるレバノンまでの移動に耐えられず、また乾燥している機内では新たなるウィルスに感染する恐れもあるため、出発直前にドクターストップがかかった。
大丈夫だろうか、という第三者の心配をよそに普通にレバノンへ旅立ち、普通に大会は始まった。平和ボケしている日本人はどのような対応を取るのだろうか?それでなくても、マイナースポーツにしてはチヤホヤされている甘い男子日本代表。
幸いにも、そんな心配を全て払拭する戦いを紛争地で見せてくれた。
初戦のチャイニーズ・タイペイ戦。田臥に続き、再びアクシデントが起こった。国際親善試合で活躍した木下 博之は開始早々3Pを決め、チームに流れを呼び込んだがプレイタイムは6'15。その後の試合は全てDNP(詳細不明)。10人での戦いを余儀なくされた。
日本が目指すバスケットは12秒間で攻め終える超速攻型の"アリーオフェンス"と24秒間足を止めない"全員ディフェンス"。女子同様、走り勝つことを目指し、12人全員で戦わなければ体力はその分奪われる。
10人になっても変わらずに、日本のバスケットを展開すべく走り抜き、アジアでのエリート集団復活を目指し、プライドを持って戦った。試合結果から顕著にそのことが見て取れるのは4Qの戦いっぷりである。
10人、そして体の当たりが激しい諸外国との対戦。体力の消耗は容易に想像できるが、予選2戦目のイラン戦と決勝のレバノン戦以外は、全て4Qの得点は上回っている。準々決勝ヨルダン戦は前半7点ビハインドだったが、後半から巻き返し最後は94-80、14点差をつけての勝利。
続く準決勝、カタール戦。3Q終了時点で7点を追いかける展開だったが、諦めずに戦った4Qでは、JBLファイナルを彷彿させる川村 卓也の3Pで同点。スタンコビッチカップ6戦目、10人で戦う日本にとっては40分でも辛い中、延長戦でも集中力を切らさず、シーソーゲームを戦い抜いて得た勝利は大きい。
決勝ではレバノンとジョーンズカップ以降5度目の対戦。レバノンはベテランのファディ・エルハディブが復帰し、完全アウェイの大観衆の中、成すすべなく97-59で敗れた。日本代表は網野 友雄を欠き、得点源でもある川村が6分ほどで退くアクシデント(詳細不明)に見舞われていた。8人では戦えない。
晴れの舞台である決勝に進むも、最終日に負けて終わる準優勝はちょっぴり切ない。勝って終わる3位の方がうらやましくさえ思う。しかし、アジア10位から復権を目指す日本代表にとっては、良い結末だったのかもしれない。
来年、再びこのレバノンでロンドンオリンピックを賭けたFIBAアジア選手権が行われる。そのプレ大会としても良い経験になったことだろう。
スタンコビッチカップに中国は不参加。同時期にアメリカ代表と対戦し、世界選手権へ向けて調整していた。5-6位決定戦を戦ったヨルダン(5位)とイラン(6位)も世界選手権に出場するアジア代表。イランは世界選手権ロスターのうち2人しか今大会に参加していない言わばBチーム。逆にベストメンバーで挑んだヨルダンは"こんなもんかい"という結果で終わった。
アジアを代表する国々が世界選手権でも結果を出していかないと、他のスポーツ同様に出場枠が減ることも懸念される。日本は指をくわえて見ているしかないが、まもなくトルコで始まる世界選手権でのアジア勢の戦いにも注目したい。
スタンコビッチカップ準優勝という結果には拍手を贈りたい。
しかし、先に挙げたライバル国は世界選手権で着実にさらに高い経験を積み、1年後はどれほど成長しているのだろうか...。すぐさま気を引き締めなければいけない。
準決勝でレバノン相手にたった1点差で敗れる好ゲームをしたフィリピンは、国を上げて選手をサポートしながら、通年代表強化を図ると宣言したと聞く。韓国も不甲斐ない結果となった昨年のリベンジに燃えているはずだ。
ジョーンズカップ、国際親善試合、スタンコビッチカップを経て、着実に日本も進化している。代表活動は短期的なことであり、国内外のリーグでの成果を発表する場でしかない。石崎はこれからドイツへの挑戦が待っているが、それ以外に海外に出て行くチャンスをつかんだ選手は今のところいない。
必然的に日本バスケを強化するには、国内リーグで切磋琢磨する環境が必要である。当たり前のように外国人同士がマッチアップする間を割って入り、ディフェンスしても良いだろう。小さくても、デカイ選手たちの間を抜いていくドライブを決めることもできる。
日本代表はアジア、その先の世界と戦うスタートラインに立った。
さらなる上を目指し、意識を高く持って戦わねばならない。今いる日本代表選手たちは、国際試合で得た自信と課題を国内リーグでは完璧にし、逆に選ばれていない選手たちはライバルとなる選手たちを蹴散らすべくアピールする。新生日本代表が示した『戦う姿勢』を新たなる日本の伝統とし、継続的に紡いでいってもらいたい。
ウィスマンHCは分け隔て無く選手たちを見ている。だからこそ大学生を選び、実績あるベテランをも使い続けた。将来を見据えながらも、ひとつひとつの大会に現時点での最高の選手たちを集め、着実に結果を求めている。この姿勢のまま、2014年スペイン世界選手権まで突き進むのだろう。bjリーグが一日も早く協会登録を完了すれば、選考の間口はきっと拡大する。
サッカーや野球など他の競技を見ていても分かる通り、日本代表を強くするのは協会ではない。国内リーグのレベルアップと選手の意識改革だ。その次に協会やチームのサポート、海外移籍への迅速な協力体制などが必要になってくる。
選手たちは変わりつつある。周りはそのレベル(意欲)に合った環境をサポートし、男子バスケをひとつ上の段階へと押しやってもらいたい。
次は11月のアジア競技大会。開幕まであと1ヶ月と迫ったJBL(9/17開幕)に戻ったばかりに意識が薄れた...とならないように、バスケ界全体でこの波に乗ろう。もちろんファンの声が一番、そして確実に届くはずだ。
最後に、日本代表にこの言葉を贈ろう。
「まだまだ物足りないぜ!」(北方謙三/ホットドックプレスより)
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