「下手糞の 上級者への 道のりは 己が下手さを 知りて一歩目」と師は赤毛に向かって詠う。
"ヘボ"と叱責した男子日本代表は、レバノン代表を迎えて行われた国際親善試合において、アジアでのポジションをようやく把握してくれたのか、気持ちがこもった試合を見せてくれた。
1勝2敗(ジョーンズカップを含めれば3敗)。まもなくトルコで開幕する世界選手権に出場するレバノン代表には負け越した。しかし、昨年とは見違えるような戦う姿勢を示した。
アジア10位。マイナスから始まったことを考えれば、敗れはしたがウィスマンHCが最終戦にコメントしたように「前向きに捉える」ことができる。
昨年のFIBAアジア選手権では、山田大治は国内と違うジャッジに対しレフェリーに食ってかかり、戦う矛先を間違えたヤジ将軍に成り下がった。
しかしジョーンズカップや国際親善試合ではそのようなシーンは減り、あったとしても他の選手たちが声をかけると、すぐさま落ち着きを取り戻す。
逆に久しぶりの国際試合となったジョーンズカップにて、青野文彦がレフェリーに対してフラストレーションを募らせていた。国際親善試合ではレフェリーが日本人だったということもあるが、同様なことが起きた時にもそっと声をかけたのが山田だった。彼の大きな進歩と言える。
網野友雄もまた、代表経験が長いにも関わらず、昨年は個人競技者のように一人で与えられた役割だけをこなしているだけだった。JBLでも積極果敢に攻めることは無い。学生時代を知るものとしては物足りず、同い年の某bjリーガーは「ヘタになった」とバッサリ切り捨てた。
しかし、あの頃のアグレッシブな網野が日本代表で戻って来た。彼自身、ディフェンスが評価されていると思っていたようだが、ウィスマンHCは「ディフェンスに自信があれば、オフェンスでも自信を持ってプレイさせることができる。それは選手の力になる」と言葉巧みに選手のモチベーションを高めながら、日本代表をレベルアップさせている。
国際親善試合の3試合を生観戦したところ、チームの雰囲気は良いようだ。コート内では木下、石崎らPGはもちろん、その他の選手も率先して声を掛け合い、そっとライン際へ進みウィスマンHCの指示を仰ぐ姿が見られた。
また、ベンチでは「残り9秒あるよ、一本、一本!」と東頭アシスタントコーチが大声を張り上げ、残り時間わずかでも貪欲にゴールを狙う。ベンチに下がった網野も手をメガホンのようにして口を覆いながら、仲間たちに声をかける。タイムアウトでベンチに戻る選手たちに残るメンバーがハイタッチ出迎え、また最年少・大学生の満原優樹には、青野、山田が果敢に声をかけていた。
当たり前の光景だが、その当たり前が昨年は無かった。
サッカーや女子日本代表が世界と勝負するために見出したとおり、日本は個ではなくチームとして戦っていかなければならない。男子日本代表はまだまだ弱い。弱いくせに我が強く、ムダにプライドが高い。その鼻っ柱が少し低くなり、意識が高くなったことにより、アジアからの尊敬をもう一度取り戻すためのスタートラインに立った。そんな戦いっぷりが、少しずつ心に響いてきた。
次なる戦いは「FIBAアジア スタンコビッチカップ」。現在の東アジアサブゾーンから来年のFIBAアジア選手権への出場枠は2つ。順当に行けば中国と韓国。昨年の成績を考えるとチャイニーズ・タイペイも侮れず、2枠のままでは非常に厳しい状況である。
スタンコビッチ上位5チーム内に入れば、東アジアの枠が増える。東アジアから今回出場するのは日本とチャイニーズ・タイペイのみ。是が非でも5位以内に入らないと、日本はFIBAアジア選手権に出られない可能性も出てくる。最悪、東アジア予選を行わず、昨年の結果から上位チームを出場させるといった適当な判断を取られてしまえばアウトである。
スタンコビッチカップは単なる経験向上の場ではなく、日本にとっては絶対に負けられない戦いである。
国際親善試合で田臥勇太は体調不良により欠場した。今もなお完治しておらず、スタンコビッチカップも欠場を余儀なくされた。多くのメディアを集めた第2戦・墨田大会。ある記者は田臥がいないことに対し、不満を露わにした。
しかし、欠場アナウンスの一報を受けた第一戦の豊田大会時、想定していたような観客からのざわめきは無かった。人気選手に依存しがちなバスケ界だが、そこに執着しているのはマスコミだけかもしれない。メッセージボードも個人名よりも日本代表を応援するものを多く目にした。
田臥に依存し過ぎて、「またかよ〜」とファンから飽きられる前にメディアも新たなる選手やその日のスターに目を向けるべきだ。田臥へのプレッシャーを軽減することで、さらに高いパフォーマンスが生まれるかも知れない。
日本代表は日本バスケ界屈指の12名。現在の日本にスター選手はいない。全員が光り輝く必要がある。ファンもメディアも全ての輝度に目を向け、本当に輝く選手をたくさん見つけることが大切だ。それが日本の力になる。
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